地震や豪雨のニュースを見るたびに、「うちの子の分は何を用意しておけばよいのだろう」と気になっている飼い主様は多いのではないでしょうか。ペットの防災グッズは、人の非常用持ち出し袋とは中身が違い、防災バッグを別に用意しておくほうが慌てずに済みます。
先に結論をお伝えすると、そろえる順番は「命に関わるもの→情報→そのほかの用品」で、フードと水は7日分以上を目安にしてください。環境省が飼い主向けにまとめた「災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」には優先順位つきの備蓄品リストが示されており、福岡県はそのうちフード・水・療法食・薬を「7日分以上」と案内しています。
私は愛玩動物看護師・JKC公認訓練士として、宗像市・福津市を中心にペットシッターとお散歩代行をしています。この記事では、環境省のリストを土台に「何を・どれだけ」用意するかを整理したうえで、グッズだけではまかなえない普段の準備までまとめました。
「ペットの防災グッズ」優先順位つき一覧|上から順にそろえます
まず全体像です。環境省のガイドラインでは、備蓄品と持ち出す際の優先順位が3段階で示されています。
| 優先順位 | 中身 | 量の目安 |
|---|---|---|
| 1.動物の健康や命に関わるもの | 療法食・薬/ペットフード・水/キャリーバッグやケージ/予備の首輪・リード(伸びないもの)/ペットシーツ/排泄物の処理用具/トイレ用品(猫は使い慣れた猫砂、または使用済み猫砂の一部)/食器 | 療法食・薬・フード・水は7日分以上(福岡県の案内。環境省は「少なくとも5日分、できれば7日分以上」) |
| 2.情報 | 飼い主様の連絡先と、飼い主様以外の緊急連絡先・預け先の情報/ペットの写真/ワクチン接種状況・既往症・投薬中の薬・検査結果・かかりつけの動物病院の情報 | 印刷したものと、スマートフォンの画像の両方 |
| 3.ペット用品 | タオル・ブラシ/ウェットタオルや清浄綿/ビニール袋/においのついたお気に入りのおもちゃ/洗濯ネット(猫)/ガムテープ・マジック | 使い慣れたものを少量ずつ |
(出典:環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」19ページ・2018年9月発行)
全部を一度にそろえようとすると、どれから手をつけるか迷ってしまいます。優先順位1から順に、買い物のついでに少しずつ足していく形で構いません。

はじめの一歩としておすすめしているのは、ふだん使っているフードをもう1袋多く買っておくことです。
これだけで備蓄が数日分増えます。
なお、避難所でペットが過ごす形は1つではありません。環境省のガイドラインには、室内で飼い主様と同居する形、飼育者と非飼育者で部屋を分ける形、ペット専用の部屋で預かる形、敷地内で屋外飼養する形が例として挙げられています。
ケージやクレートが必要になる場面は多いものの、飼育場所と持ち物のルールは避難所ごとに異なります。
フードと水の「7日分」はこう数えます
環境省のガイドラインは「少なくとも5日分、できれば7日分以上」としていますが、福岡県は療法食・薬・フード・水をいずれも7日分以上と案内しています。宗像市・福津市で暮らす方は、県の案内に合わせて7日分以上を基準にしてください。
「7日分」と言われても、袋のグラム数からすぐには計算しにくいものです。次の手順で数えると、そのまま買い物メモになります。
- ふだんの1日分のフードを、計量カップではなくキッチンスケールで量ります
- その重さを7倍します
- 未開封の袋で、その重さを超える量を備蓄に回します
- 水も同じように、1日に飲む量を数日間はかって平均を出し、7倍したうえで予備を足します
飲水量は体格・季節・食べているフード(ウェットかドライか)で変わるため、一律の数値では備えにくくなります。避難生活では暑さや緊張で飲む量が増えたり、器がこぼれて失われたりすることもあるため、実測した量ちょうどではなく、余裕を持たせておいてください。
療法食や持病の薬がある子は、優先順位のいちばん上に置いてください。手に入りにくいものほど、切らしたときの影響が大きくなります。
備蓄は使用期限の管理も大切です。古いものから普段の食事に回して、減った分を買い足す「ローリングストック」にしておくと、期限切れを防ぎながら備えを保てます。

常用薬は、処方のタイミングで「少し多めに」とご相談いただくと予備を作りやすくなります。
残量と期限は、季節の変わり目に確認する習慣をおすすめしています。
防災バッグは「持ち出す用」と「家に置く用」に分けます
ペットの備蓄は、人の分と合わせるとかなりの重さになります。1つの袋にすべて詰めると、いざというときに持ち出せません。
- 持ち出す用:優先順位1の中でも軽いもの(数日分のフード・水・薬・予備のリード・ペットシーツ・食器)と、優先順位2の情報をまとめます
- 家に置く用:残りの備蓄と、かさばる用品を家の安全な場所に置きます。在宅避難になったときはこちらが生活を支えます
分けたら、一度そのバッグを持って、キャリーやリードを持った状態で家の外まで歩いてみてください。片手がふさがる前提で持てるかどうかが、実際に持ち出せるかの分かれ目になります。
犬はリードを持ち、猫や小動物はキャリーを持つことになります。両手がふさがる想定で、バッグはリュックにしておくと動きやすくなります。
グッズをそろえるだけでは足りません|本番で効くのは普段のしつけです
備蓄がそろっていても、避難先でクレートに入れない、トイレができない、人に触られるのを嫌がるとなると、その子にも飼い主様にも大きな負担がかかります。環境省のガイドラインでも、平常時に飼い主が行うべき対策の2番目に「ペットのしつけと健康管理」が挙げられ、犬猫ともに「ケージなどの中に入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく」ことが示されています。
避難所での飼育場所は前述のとおり複数の形がありますが、いずれの形でもケージやクレートに入って過ごす場面は出てきます。慣れていない子ほど鳴き続けたり、体調を崩したりしやすくなります。
手順は災害から愛犬を守る「クレートトレーニング」訓練士が教える手順にまとめていますので、防災グッズをそろえるのと並行して進めてみてください。
決められた場所で排泄できることも、避難生活では大きな差になります。トイレの練習でつまずいているご家庭は、新資格「ドッグトイレッターズ」愛犬のトイレ問題と「安心」の新しい形もあわせてご覧ください。
避難先では、獣医師やボランティア、避難所の方など、家族以外の人が近づく場面が出てきます。人や他の動物を怖がりやすい子は、社会化期を過ぎても大丈夫!怖がりな愛犬を少しずつ慣らすコツの進め方で、少しずつ慣らしておくと安心につながります。
なお、失禁のある子や、外に出られない時間が続く状況に備えて、ペット用のおむつを加えておく方法もあります。ただし、おむつは排泄そのものの代わりにはなりません。
つけたままにすると、皮膚のかぶれや尿やけにつながることがあります。汚れたらすぐ交換して皮膚を乾かし、数時間ごとに外して状態を見てください。
かじって飲み込んでしまう子もいるため、着けている間は目が届く状況で使うことが基本になります。持病がある子や失禁が続いている子は、使い方をかかりつけの獣医師に相談しておくと安心です。
使い慣れていないと嫌がることも多いため、防災用として買うだけでなく、一度着けてみて様子を確かめておいてください。

しつけは、災害のためだけのものではありません。
通院や預かりの場面でも、その子自身のストレスを減らしてくれます。
迷子にさせないための備え|首輪・迷子札・鑑札・マイクロチップ
環境省のガイドラインでは、平常時に飼い主が行うべき対策として「ペットが行方不明にならないための対策」が独立した項目に挙げられています。同行避難ができるかどうか以前に、「離れてしまったときに戻ってこられるか」が備えの土台になります。
犬の場合、狂犬病予防法により鑑札の装着と、年1回の予防注射済票の装着が義務づけられています。首輪と迷子札もあわせて着けておくと、保護してくださった方がその場で連絡先を確認できます。
猫の首輪は、ひっかかり事故を防ぐために力が加わると外れるタイプがすすめられることがあります。その場合は外れたときに身元が分からなくなるため、環境省のガイドラインでもマイクロチップの装着を強くすすめています。
マイクロチップは、販売される犬や猫については装着と情報登録が義務づけられていますが、すでに飼っている方の装着は努力規定とされています(環境省「マイクロチップの装着等の義務化に係る制度説明」2023年3月1日)。
見落とされやすいのが、装着したあとの手続きです。ペットショップやブリーダーから迎えた子はすでに装着・登録が済んでいるため、飼い主様は登録証明書を使って自分の情報へ「変更登録」を申請する義務があります。
自分で装着した場合も、装着そのものは努力義務でも、装着後の情報登録は義務です。引っ越しや電話番号の変更があったときの届出も必要になります(環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」)。
手続きは、環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」から行えます。連絡先が古いままだと、保護されても飼い主様にたどり着けません。
写真も忘れずに用意してください。全身と顔が分かるものを印刷し、同じ画像をスマートフォンにも保存しておくと、探すときにも保護されたときにも役立ちます。
玄関に「ペットがいます」を示しておきます
やむを得ず、飼い主様が先に家を出て避難する状況も起こり得ます。留守中に被災した場合も同じで、家の中にペットがいることが外から分からないと、救助や安否確認の手が届きにくくなります。
そのために、玄関のドアや門扉に「ペットを飼っています」と分かる表示をしておく方法があります。市販のステッカーのほか、自治体や動物愛護団体が配布していることもあります。
表示には、動物の種類と頭数、飼い主様の連絡先まで書いておくと、見た方が動きやすくなります。環境省のガイドラインでも、平常時の対策として「留守中の対処方法と協力体制」を家族や地域で話し合っておくことが挙げられています。
頭数が変わったときは、表示も書き替えてください。ペットと一緒に避難できたときは「避難済み」と分かるように書き足しておくと、救助に向かう方が家の中を探す手間をかけずに済みます。

ステッカーは玄関に貼るだけで終わりにせず、ご近所や大家さんにも「うちには猫が2匹います」と伝えておいてください。
ひと言の共有が、いざというときの助けになります。
避難所のルールは「行く前」に調べておきます
同行避難という言葉は、飼い主様がペットと一緒に避難する行動を指します。環境省のガイドラインでも、「避難所でペットを人と同室で飼養管理することを意味するものではありません」と明記されています。
つまり、受け入れの可否や飼育場所、持参するものは避難所ごとに違います。福岡県は「ペットと同行避難ができる避難所について」で市町村ごとの状況を一覧にしています。
福津市はこの一覧から市のページをたどれるほか、防災アプリ「ふくおか防災ナビ・まもるくん」でも同行避難ができる避難所を確認できます。一方、2026年7月時点で宗像市は市ホームページ欄・アプリ欄ともに掲載がありません。
そのため宗像市にお住まいの方は、宗像市防災ホームページで避難所の場所を確認したうえで、ペットの受け入れ条件は市の危機管理課へ直接お問い合わせください。避難してから知るのと、地図を見ながら家族で決めておくのとでは、当日の動きやすさが変わります。
避難所に行けない場合の預け先も、あわせて考えておいてください。親戚・友人・かかりつけの動物病院・ペットホテルなど、複数の候補を挙げておきます。
このとき、名前を挙げるだけで終わらせないことが大切です。災害時に受け入れてもらえるか、条件・預かれる期間・費用まで、平常時のうちに聞いて書き留めておくと、当日に迷いません。
タイプ別|「うちの場合」の備え方
ご家庭の状況によって、優先して足すものが変わります。
多頭飼いのご家庭
フード・水・トイレ用品は頭数分×日数で計算します。持ち出す担当を家族で分けておき、1人で全頭を連れて出る場合の動きも一度試しておいてください。
シニア・持病のある子
療法食と薬が最優先になります。投薬内容とかかりつけの動物病院を1枚の紙にまとめ、防災バッグと保険証入れの両方に入れておくと安心です。
猫と暮らすご家庭
使い慣れた猫砂、または使用済み猫砂を少し持ち出せるようにしておくと、慣れない場所でも排泄しやすくなります。洗濯ネットは、診察や保護の場面で役立つ用品として環境省のリストにも挙げられています。
うさぎ・ハムスターなどの小動物
暑さ・寒さの影響を受けやすいため、キャリー内の温度を保つ用品を優先します。ふだん食べている牧草やペレットは手に入りにくいことがあるため、多めの備蓄をおすすめします。
まとめ|ペットの防災グッズは「順番」と「普段の練習」で決まります
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- そろえる順番は、①命に関わるもの ②情報 ③そのほかの用品(環境省ガイドラインの優先順位)
- フード・水・療法食・薬は7日分以上(福岡県の案内)。1日量を量って7倍し、水は予備を足す
- 療法食・常用薬は最優先。ローリングストックで期限を切らさない
- 防災バッグは「持ち出す用」と「家に置く用」に分け、一度背負って歩いてみる
- クレート・トイレ・人に触られることへの慣れは、グッズでは代えられない備えになる
- おむつは排泄の代わりにはならないため、こまめな交換と見守りをセットにする
- 鑑札と迷子札に加え、マイクロチップは装着・情報登録・変更登録までをセットで行う
- 玄関の表示とご近所への共有で、留守中に被災したときの助けにつながる
- 避難所の受け入れ条件は市町村ごとに違う。宗像市は県の一覧・アプリに未掲載のため危機管理課へ確認する
- 預け先は名前を挙げるだけでなく、受け入れ可否・期間・費用まで平常時に確認しておく
備えは一度に完成させるものではなく、買い物や散歩のついでに1つずつ足していくものです。今日はフードを1袋多く買う、そこから始めてみてください。
ペットの防災やしつけのご相談はHONEYへ
「うちの子はクレートが苦手」「多頭飼いで、いざというとき連れて出られる自信がない」という方は、Pet Life Support HONEYにご相談ください。
愛玩動物看護師・JKC公認訓練士の資格を持つスタッフが、宗像市・福津市を中心に、その子の性格に合わせた慣らし方をお手伝いします。お留守番中のシッティングでも、クレートやトイレでの過ごし方を含めてようすを丁寧にご報告いたします。
Pet Life Support HONEY
福岡県宗像市ペットシッター


